福岡市西区の塾より「9月入学について」
2020/04/29
4月28日、東京都の小池百合子知事は、
「9月スタートは世界的にも多くの国々が行うグローバルスタンダード」
「留学を呼び込むにもプラスになる。一種のパラダイムシフトで、大きく社会を変えるきっかけになる」
と強調したそうです。
相変わらずカタカナ語の多い表現ですが、
全国17知事も学校の9月入学制導入の検討を政府に求め緊急共同メッセージを採択しました。
またバラエティー番組のコメンテーターも概ね9月入学に賛成しているようです。
しかしこの改革は社会全体に大きな影響を及ぼすもので、
実現は簡単なものではないと言われてもいます。
私も単純にいくつもの疑問が生じています。
(1)そもそも小中高校をこのまま休校にする科学的根拠は何か?
「子どもたちの命を守る」
この言葉に争える者は誰もいません。
しかし、休校を解除すると、
どれくらい学校を起点とするクラスターが発生するのか?
その際、子どもたちはどのくらいの割合で重症化するのか?
その家族への影響は?
などなど何も科学的な根拠を示さないまま、
なぜ子どもたちの「普通教育を受ける権利」を侵害し続けるのでしょうか?
(2)年度制も変更するのか?
教育関係だけ9月スタートに変更し、
役所は4月スタートを維持するのでしょうか?
政府の予算編成はどうなるのでしょうか?
(3)企業側はどのように対応するのか?
現在は4月に新卒採用を実施していますが、
これも9月に移行するのでしょうか?
さらに就職活動はどのように変化するのでしょうか?
現在、企業側の選考・面接は前年の6月開始ですが、
これもずらしていくのでしょうか?
個人塾を営んでいる者として一番気がかりなのは、
(4)大学・高校・中学・小学・幼稚園の受験はいつ行われるのか?
現行通り来年の1月から本格化するとすれば、
あまりにも現在の受験生、特に高校3年生は、
圧倒的に不利になります。
では、入試日もずらして国公立大学など7月実施にするのでしょうか?
すると来年の東京オリンピックと重なってしまいます。
首都圏の大学入試のための宿泊施設を、
受験生は確保することは出来るでしょうか?
(3)に関連して、
(5)冬の受験は子どもたちに不利益なのか?
テレビの地上波ではありとあらゆる乱暴な理由づけ、
「今、混乱しているのだから、今が改革のチャンスだ」
などと叫ばれていますが、
なぜ?これ以上の混乱を望むのでしょうか?
混乱の中での改革を望むのなら、
東京オリンピックも中止にすることを主張するべきだったと思います。
まずは出来るだけ混乱を避ける知恵を出すべきではないでしょうか?
話がそれましたが、
「冬はインフルエンザが流行るので、そのような時期に受験させるのは可哀そうだ」
という意見があります。
しかし、夏に受験をずらせば、
台風により被害を受ける可能性が高まります。
我が家が洪水で被害を受ける中、
受験をさせることが良いのでしょうか?
(6)世界と合させることが、それほど大事か?
「世界各国は9月入学がスタンダードだ」
と言われますが、
「だから何なんですか?」
と思ってしまいます。
日本は4月入学を続けてきた歴史の中で、
現在、世界有数の先進国となっています。
「留学が行いやすくなる」
という意見も多いようですが、
留学生の受け入れは、近年、4月入学でも年々増加していますし、
時期で他国からの留学生を募るのではなく、
日本の教育内容の質で募るべきではないでしょうか?
そもそも留学が増加すると何が良いのか?
もっと発信して欲しいと思います。
日本の学生の留学は旅行の延長程度のものが少なくないように感じます。
「いったい何を学んできたのか?」
よく分からない留学になっていないでしょうか?
現在はインターネットの発達により、
他国のことを本気で学ぼうとすれば、
かなり高度なレベルでも学べます。
そのようにしっかりとした準備・下調べをした後に、
海外留学を行って欲しいと思います。
そもそも新型コロナウイルスの感染が、
欧米諸国に比べて、これだけ抑えられているのは、
日本人の生活習慣が欧米と違うことが理由ではないのでしょうか?
街中はゴミも少なく清潔感に溢れていますし、
家の中では靴を脱ぎ、
トイレとお風呂が分れ、
蛇口をひねると飲める水道水が出てきます。
「世界は」
「欧米は」
と言うならばこれらの生活も変えるべきなのでしょうか?
何でも欧米の例を挙げて主張するようでは、
まるで鹿鳴館時代です。
歴史はそれを否定しているはずですが?
この他にもまだまだ疑問点が今後も生じてくることでしょうが、
もし9月入学を実現するのであれば、
9月までの期間に
すべての疑問に丁寧に答えて欲しいと思います。
そうでなければ、
また、実施した後で不平不満を言い出し、
政策のあら捜しをして、
時の政権を批判するだけの評論家がはびこることになるでしょう。