福岡市西区の塾より「欧米の真似」
2020/05/16
安倍首相は9月入学について、
「有力な選択肢の一つだ」
と前向きに検討する意向を示しています。
私はなぜ9月入学に固執するのか?
その理由が今一つ理解できません。
デメリットとしては、
(1)33本の法律の改正が必要である。
(2)幼稚園・保育所の卒園・所予定だった子供たちをどう扱うのか?
(3)幼児教育・保育無償化の期間延長による予算の増加。
(4)待機児童の増加の懸念。
(5)小中高校などの教室・教職員の増加の必要性。
(6)入試や資格試験、採用・就職活動など社会全体の日程の変更。
(7)制度改革に伴う5兆円以上の予算の必要性。
と様々な課題が考えられています。
一方メリットは、
(1)休校に伴うカリキュラムの遅れを解消できる。
(2)国際標準に近づく。
ぐらいしか聞こえてきません。
(1)についての疑問は、
今回の新型コロナウイルスの感染防止に伴う約3か月の休校に対する措置になりますが、
数年後に新たな自然災害や感染症拡大により、
8月から10月ぐらいにかけて休校を余儀なくされた場合は、
同じ理由から4月入学に戻すのでしょうか?
「子どもたちの学力の保障」と言えば聞こえは良いですが、
将来に渡っての整合性は取れるのでしょうか?
(2)についての疑問は、
「なぜ欧米の真似をする必要があるのか?」
その理由がよく分かりません。
何でも欧米を真似れば良いということでは、
まるで明治の頃の鹿鳴館時代ではないでしょうか?
あの時代、日本はどれほど欧米諸国に馬鹿にされたことか、
また繰り返すつもりなのでしょうか?
ただ真似れば良いとは絶対に言えないはずです。
どうして日本の制度に誇りを持ち、
改善を重ねることで、
逆に欧米に真似をしてもらえるように頑張らないのでしょうか?
企業においても終身雇用制を見直し、
転職を促す風潮や、
年功序列賃金制を見直し、
能力給を導入することによって、
一層経済格差が進んではいないでしょうか?
転職によって収入が1割以上増加する人の割合は、
2割から3割だそうです。
7割から8割の転職者は失敗しているのです。
それなのに転職を進めるかのような世の中の空気は何なのでしょう?
簡単に就職先を辞める若者たちが、
貧困へと落ちて行っているのに、
離職率は増加傾向にあります。
能力給も「仕事の出来る人」にとっては最高ですが、
みんながみんな自分の思い描くように仕事ができる人とは限りません。
当然のことながら、
「出来る人」と「出来ない人」の間には、
経済格差が拡大するに決まっています。
まあ企業側から見れば、
「優秀な人材は欲しい」
「役に立たない人材はいらない」
という理屈は理解できますが…
地上波放送では都道府県知事などが、
「グローバルスタンダードだ」
「そうなれば留学生の増加につながる」
と声高らかに主張していますが、
欧米に合わせるメリットが、
留学生の増加だけなら余りにも制度改革の意義が弱いと思います。
そもそもなぜ留学生が増加することが、
日本にとって良いことであるのかが、
十分に説明されていません。
たとえ海外から優秀な人材が
日本で働いてくれるようになったとしても、
日本の優秀な人材が海外に流出するのであれば、
意味がないと思います。
留学生を増やして、
どのように日本の将来に生かすのか、
そのビジョンを示して欲しいものです。
まずは留学生を増やすことより、
日本の企業や研究機関の価値を高めることが、
優先事項だと思います。
魅力があれば、
人は自然と集まってきます。
9月入学など小さなことではないでしょうか?
「教育は国家100年の体系」
と言います。
どのような教育制度・教育方針を持ち、
子どもたちに接していくかで、
未来の日本の姿が変わるのです。
新型コロナウイルスの感染拡大という非常時に紛れて、
大した意味もなく強引に制度改革に踏み切ることは、
許されるべきものではないと思います。